核融合金ニュートロン

『時代の調べ』

-この世に確固たる真理など存在しない。
なぜならこの世の本質は『揺らぎ』だからだ-
from G

そう表示されたディスプレイを背に一人の男が真っ暗な部屋を後にした。通称『第一次地球圏大戦』と呼ばれた、異星人に対する防衛戦争が地球側の辛勝によって終結したちょうど一週間後の事であった。

それから7年経ち、時はNC2136年。その間、大戦後新規発足した地球圏国家間連邦統合政府-通称国際連邦-は再び起こり得るであろう異星人の襲来を予測して地球圏防衛組織『PHOTON』を設立。金星、火星及び木星軌道上に偵察用衛星を設置した。その一方で地球人類はまた一つの技術革命を迎えんとしていた。日本のβ-TRON研究所に於いて木亥博士らによって提唱、開発された全く新しい核融合技術『β核融合』である。従来の核融合と違い格段に原子番号の大きい原子同士の核融合を可能としたこの新技術は地球人類の文明に全く新しい金属の恩恵を与える事となった。

そしてNC2136/02/25、地球圏に於ける束の間の静寂は地球人類が予測していたよりもはるかに早く終わりを告げた。木星軌道宙域近辺に突如として『時空回廊』となる可能性が高いと思われる空間の歪みが発生したのだ。国際連邦は即座に空間の歪みの調査を開始、木星軌道上の無人探査衛星から小型探査プローブを向かわせた。同年05/03、プローブからの通信途絶とほぼ同時に時空回廊付近に於いて9×1019ジュールもの巨大なエネルギーの放出が確認された。幸運にも周りの宙域にはさほど大きな影響を及ぼすことは無かったがその代償として空間の歪みが肥大、安定化して『時空回廊』が固定してしまった。

それから約一か月後の06/12、時空回廊の向こうから明らかに知的生命体のものと思われる物体が現れた。物体は火星軌道近傍にまで到来し、軌道上の防衛衛星による自動追尾ミサイル攻撃によって爆砕された。それとほぼ同時に時空回廊の出口に宇宙基地のようなものが建設され始めた。PHOTON首脳陣は異星人による大規模な攻撃準備を予測し、装備の増強と隊員の増員を行った。その際隊員の入隊最低年齢が16歳に引き下げられるなど、一部団体から非人道的との非難の声が上がる様な方策も取られることとなる。だがそのような必死の努力にもかかわらずPHOTONにはただ一つの解決できない問題が残されていた。前大戦の折に航宙戦闘艦のほぼ全てが失われていたため、無人防衛衛星以外の宇宙戦力は事実上零ということである。これはすなわち今度の戦争に於いて戦場は地球上とならざるを得ないということであった。

数々の不安要素を抱えたまま戦乱は再び蒼き星の上に巻き起こる。