ククリと猫と観測者についての考察

〜13巻パート3〜

さて、13巻で残るは、量子力学的考察(笑)です。

パート1で、ククリが除いていた「箱」とは、いわばゲーム機なのだ、という説を提示しましたが、じつはこれについては別の解釈の方法もあるのだ、という話です。

衛藤先生も気づく人は少ないと思っていたらしいので、当然知らなくても支障があるわけでもないんでしょうけどね。

シュレーディンガー方程式

ご存知の方もとっくに多いと思いますが、トリコさんの見ている小説の表紙に書かれた図形。120章カラー扉の右下に書かれたもの。これはいつものグルグル文字ではありません。数式です。綺麗に書くとこうなります。

左辺側、斜体の「 i 」は虚数単位を、線の入った小文字の「h」はプランク定数を2πで除したものを、その右のへんな分数の部分は時間による偏微分を、その右の「 Ψ 」は波動関数を、右辺の太字の「 H 」はハミルトニアンをあらわします…っていうのはどうでもよいことですね。

こいつは量子力学の方程式、いわゆるシュレーディンガー方程式といわれるもののひとつだと思います(思いますっていう辺りが自信なさげですが気にしないように)。まあこの方程式を解くことで物理値が求まったりと便利な方程式なんでしょうが、そんなことは今はどうでもいいのでご安心ください。

とにかく、量子力学の方程式なのです。量子力学とくれば、「観測者」、というわけです。

シュレーディンガー方程式といえばシュレーディンガー。この人は科学者です。「シュレーディンガーの猫」というエピソード…というか仮想実験で有名な人です。

シュレーディンガーの猫

箱を用意します。ふたを閉めてしまうと密閉され、外からは中の様子は一切わかりません。この中に「猫」と、「一定の確率で核分裂を起こす放射性原子1個」、「そしてその核分裂を検出し、核分裂が起こったら箱の中に毒ガスを発生させる装置」を入れます。

んでふたを閉めます。

何時かはしりませんが、猫はいずれ毒ガスで死にます。外からは生死の確率は正確に計算はできますが、実際の生死をはっきり判定することはできません。核分裂のタイミングは予測不可能だからです。でも、きっと死んでいるか生きているか、そのどちらかではあるのでしょう。「どっちでもある」わけではないはず。

ところが、この猫が死んでいるか死んでいないか、ということは、量子力学によるある科学者の主張によれば、ふたを開けてみるまで「未確定」だ、というのが、シュレーディンガーの仮想実験の中身です。「分からない(未知)」ではなくて、「決まっていない(未確定)」、つまり半分死んでるけど半分生きているような状況……生と死の混ざった状態だ、ということなのです(死にかけだ、という意味ではないですよ、念のため)。猫は死んでいるか生きているかどっちかしかないはずなのですが、ふたを開けた時点で「観測」され、生死はその時点で「決定される」という。逆に観測していなければ不確定だという。

シュレーディンガーは「こんなん妙だ」と主張して量子力学を退けようとしたそうですが。実際、理論上は生死は決まらないそうです。人間が観測するという事実により波動関数が収束してひとつの状態として姿をあらわすが、そうでない場合は分からない、それだけでなく、「決まっていない」のだ、ということで。

長く書くと量子力学のページになってしまうのでやめます。まあ、そういうエピソードがある、ということで。詳しくは検索サイトで「量子力学」とか「シュレーディンガーの猫」とかで検索しましょう。

とにかく、観測することによって状態が決定され、観測していないときには、起こりえる状態が確率的に混ざった未確定な状況なのだ、というのが量子力学の主張なのです。

結局メッセージは

ガルリロのセリフです。

キミたちは観測されている
観測者の目から逃れられないかぎり
この島から出られないんだよ

みんながグルグルの中に…
ククリちゃんの心の箱の中にいたんです
「観測者」はククリちゃんだったんです

これを見ると…間違いなく「シュレーディンガーの猫の箱」という感じですね。深い意味がありそうでなさそうなこの「観測者」ですが、意味があるとすれば、僕なりの解釈は以下のようなものです。

『しっかり自分のハートを監視していないと不確定なハートになって、また暴走しちゃうから気をつけてね』

これが言いたいために、「観測者」を持ち出してきているのではないでしょうか。121章のタイトル「不確定なハート」もそれを示しているのでは、と思います。実は…かなり強引なんですけど。

ちなみに、138ページの「トリコさんが『観測』していたとすれば」については、「観測しなければ、そのものの位置が決定しない」ということを意味するのでしょう。これも量子力学の主張の一部です。逆に122ページでは「観測者の目を逃れることにより、位置が不確定になる」ことを暗示しているのだと思いますが。

まあ、「猫」「箱」「観測」「不確定」「方程式」といった要素をちりばめて統一感を持たせただけ…といわれると、そうかもしれないのですが。衛藤先生のみぞ知るということで。僕の解釈も無茶ではないと思います。


…ここまで読んでいかがだったでしょうか。「narutoの解釈はでっち上げだ、無理矢理そう読んでいるだけなんじゃないのか?」と思った方もいると思います。8巻〜13巻を読み返してみれば、ここで語れなかった伏線が、まだたくさんあります。「ハートの魔法陣」を中心に綿密に構成された「グルグル」の世界、「恋するハートの封印」や「魔境」という不思議な舞台装置に乗せたククリの心境、願い、思い。ここまでに提示した文脈に乗って読めば、自分自身で全く違った世界に気づくのではないかと思います。


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